6月12日に開催された「東京シティーロードレース2005」(主催:東京陸上競技協会)では、梅雨入り直後というのに、都心部では真夏並みの日差しが照り付け、最高気温も29.8度に達した。このため、10kmと短距離ながら熱中症などで体調の悪化を訴える参加者が相次いだ。しかし、医師7人を含む約100人の救護体制がおおむねうまく機能し、重症化を最小限に抑えることができたようだ。
国内でも、ここ数年間で10人近くの人が市民マラソン中に死亡しており、競技中の突然死は大きな問題となっている。本大会では、医師7人、看護師3人、救急救命士21人、その他の医療スタッフ14人に加え、一定のトレーニングを受けた54人の学生ボランティアが参加し、救護活動に当たった。コース上には固定救護所が5カ所設けられ、医師、看護師、救急救命士が配置された。
さらに、救急救命士2人がペアを組んだ自転車救護隊6組がそれぞれの担当区間を巡回することで、一刻を争う救急医療の現場において、より迅速な現場到着を可能にした。この自転車救護隊は、自動体外式除細動器(AED)を含む救急医療資機材を携帯し、現場で直ちに救護活動を行えるようにした。また、沿道にはボランティア員が2人1組になり、300〜400mおきに待機した。各救護所、救護隊、ボランティアは、広域無線や携帯電話を使って大会本部と連絡を取った。
こうした体制は実際に威力を発揮した。新宿区の四ッ谷三丁目付近で熱中症により気分が悪くなって倒れ、頭部にけがをした男性の場合、その場に居合わせたボランティアが即座に本部に連絡、本部から指示を受けた自転車救護隊が数分で現場に駆け付け、応急手当をした。この男性はその後、救急車で近くの病院に搬送された。
同大会には一般、障害者、車いすランナーなど6283人の市民が参加した。傷病者が続出したのは、当日の気温が予想以上に高かったためと見られる。気象庁が発表した12日の都心の最高気温は、今年に入って一番高い29.8度。平年より5度近く高かった。東京消防庁によると、同大会では男女21人が救急車で搬送され、うち5人は重症だった。内訳は20人が熱中症、1人が脱水症状で、水分補給や体温調整が十分なされなかったことが原因とされた。
各救護所にも多数の傷病者が搬送された。予想を上回る数でだったため、一部の救護所では点滴バッグが足りないなどの問題も発生した。
しかし、多くの医療関係スタッフによる的確な処置で重症化を防いだことで、大半は救護所での手当で済んだ。幸い死者も出なかった。「今回は1〜2人死亡者がでてもおかしくない状況だった」と、今大会の救急医療を担ったスポーツメディカル協会(SMA)副理事長で、国士舘大学スポーツ医科学部教授の田中秀治氏は話す。
故障者が続発した理由として、医師として今大会の救護活動に当たり、自身もマラソンを走る太田眞氏は、「10kmと比較的短距離であったことや天気予報が外れたことで、参加者が準備不足になったのだろう。走る距離と体への負担は比例しない。問題は自己管理ができるかどうか。10kmといえども甘く見ないでほしい」と指摘していた。(富田文、日経メディカル)
訂正 第7段落で田中秀治氏の肩書きを国士舘大スポーツ医学科教授としていましたが誤りで、正しくは国士舘大学スポーツ医科学部教授でした。お詫びして上記のように訂正いたします。