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第8回アジアスポーツ医学会学術大会

ロードレース中の心停止をくい止めろ!

資料提供:Jレスキュー Vol.14 夏号 2004/08/10

日本初!モバイルAED隊が走る
市民マラソンのトップレベル医療体制

車いすのランナー、臓器移植を受けた人、上は90歳という高齢の走者、レースは初めてという初心者ランナー。 一般のロードレースには参加不可能な”リスク”を負ったランナーたちも、思い思いに走りを楽しむ。 そうした参加アスリートたちを医療面からガッチリ支えるのが、通称SMA。現場で救命救急センター並の医療を施せる環境をめざして、 今年はAEDを搭載した自転車部隊もデビューした。レースを見守る医療スタッフたちの姿を追った。

大勢のBLSボランティアと自転車隊

「そっち、用具全部そろってる?チェック頼むよ」
「学生ボランティア全員、集まった?じゃ、段取り説明しまぁす」

 小雨がパラつく日曜日の朝8時、スタート地点である東京都心の日比谷公園内広場。 大会関係団体のテントがいくつも並ぶ中に、ひときわにぎやかなテントがあった。 おそろいの白いジャンパーの背中に「生命の星」を背負ったSMA(スポーツメディカル協会)のスタッフたちと、 それを上回る数の白いTシャツの若者たち。 若者たちはBLS(一次救命処置)のスキルを身につけた学生ボランティアだ。 50名を超える彼らが、今日は10kmにわたるコース沿道に等間隔で待機する。 「頼もしいよね。ボランティアに参加してくれる学生たちとは、 大会前からメーリングリストで細かく意思の疎通を図ってきた。 バイスタンダーとしての意欲にあふれる若者たちです」

 白っぽいユニフォームの中で、ひときわ鮮やかなブルーのベスト姿の横井医師がうれしそうに笑う。 桜井医師をはじめ、現場で”救命救急センター並みの医療”の要となる救急医たちは、 人混みの中でも目立つブルーのベストを着用している。「おおっ! カッコイイねー」

 スタッフらの拍手の中あらわれたのは、 救急医と同じブルーのユニフォームをまとった5人の男女。 こちらは全員が救急救命士だ。ブルーのサイクル用シャツに黒のハーフパンツ、 ブルーのグローブとヘルメットでキメた姿でポーズを取る。 彼らこそ今回の目玉、市民マラソンの救護体制では日本初の試みとなる「モバイルAED隊」の隊員たちである。

増える市民マラソンでの突然死

 世界のエリートランナーたちが勝負する「東京国際マラソン」。 東京シティロードレースは、その最終10キロ、日比谷公園〜国立競技場の区間を走る市民のためのイベントだ。 一般の部のほかに、車いすの部、視覚障害者の部、知的障害者の部、移植者の部があり、 移植者の部には心臓移植をした参加者もいる。1km10分以内のペースでOKという長い制限時間もあって、 高齢者の参加者が多いのもこのレースの特徴だ。

 一方、いわゆる市民マラソンでの参加者の突然死事故は、 全国で頻繁に発生している。スカッシュ中の高円宮殿下が亡くなった2002年11月以降だけでも10人近く。 原因はほとんどが心臓の疾患である。 こういった突然の心停止は「心室細動」と呼ばれる心臓のけいれんから始まることが多い。 心臓が心室細動を始めたら、頼りになるのは除細動器だけだ。 普通より健康上のリスクが高い人々も多数参加する東京シティロードレースでは、 だからこそ「救命救急センター並の」救護体制や”走るAED”が、どうしても必要だったのだ。

日本で一番安心して走れる道へ

 東京シティロードレースにおけるSMAの救護体制はこうだ。

 まず、コースとなる路上10kmを8つの救護ゾーンに分ける。 ゾーンとゾーンの間7ヵ所のうち、2ヵ所にはドクターカー並の資器材を積んだ救護車が待機し、 残りの5ヵ所をモバイルAED隊が固める。 その間の路上には約50名のBLSボランティア学生が散らばる。 スタート地点の日比谷公園には救護テント、ゴールの国立競技場には基幹の医療設備となる救護室が設けられ、 すべての救護車と救護テントには、 医師・看護師・救急救命士・SMAスタッフの4名からなる「救命医療チーム」が待機する。 コースのどこかで誰かが倒れたら、1分以内に一次救命処置を行うスタッフが駆けつけて処置を開始。 必要ならさらに1分以内にAEDが到着、同時に救命医療チームが現場に駆けつけるという素早さだ。

 この日の日比谷公園〜国立競技場の10kmは、 おそらく日本で一番、人が安心して歩ける(走れる)道になった。

事前の啓蒙活勣にも力を注ぐ

 小雨交じりの初夏の都心を、5000人が駆け抜ける。

 今回の大会では、当日に万全の救護体制を敷くだけでなく、 安全なレースを楽しむための事前のコンディションづくりも重視した。
「実はこういったレースでリスクが高いのは、移植経験者や障害者の方々より、 むしろ一般参加の初心者ランナー。移植した方や障害者の方は、 ふだんから健康管理に人一倍気を遣っているし、自分の身体の状態もよく把握していますから。 10km程度ならと気軽に挑戦した初心者ランナーが身体のSOSに気づかず無理をしてしまうことも多いんです」(前出・櫻井医師)

 そこでSMAと日本移植者協議会が協力して、 大会3ケ月前からスタートする13週間の初心者向けプログラムを作成。 大会公式ホームページ上で公開した。まったく経験のない人でも、このプログラムに従ってトレーニングすれば、 大会当日には無理なく10km完走できるようになるというものだ。 さらに大会前日には日比谷公園で、プロ選手のトレーニング講座や正しいストレッチング、 応急手当などを見せるイベントを開催。 「誰もが楽しめる安全なロードレース」を、わかりやすく楽しく伝えることに腐心した。

連係プレーが成果を発揮

 念入りな準備も功を奏して、今回は幸いにもAEDを必要とするような重篤な患者は発生しなかった。 が、路上で突然意識を失い、モバイルAED隊の救急救命士が駆けつけた事例が2例あった。 5km付近で倒れた男性のもとに2分で駆けつけて応急処置を施したのは、 モバイルAED隊の大河原由記(よしのり)さん(富岡甘楽広域消防本部)。 スタッフ間の連係プレーで男性は意識を回復し、東京消防庁の救急隊に無事、引き継がれた。
「イメージ通りの連係プレーが実施できたことは大きな成果。 今後もさらにサポート体制を充実させていきたいですね」(田中秀治SMA副理事長)

 誰でも、いくつになっても好きなスポーツを楽しみたいと考える人が増えてきた。 高齢化社会を迎え、「スポーツのバリアフリー化」は必須の課題だ。 スポーツ施設にAEDが配備され、全国の大会でこうした万全の救急医療体制が敷かれるようになれば、 その実現も遠くはないだろう。

 

この記事は東京シティロードレース2004の紹介です。

東京シティロードレース2004の詳細をご覧になりたいかたはこちらのページへ。

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